大地主と大魔女の娘
「もうしわけあり、ありませんでした」
謝りながら二杯目をついだ。
手元が少しぶれた。
立ったままで給仕をするから、右足にあまり体重を長く掛けていられないせいから、だと思う。
(不安定だから)
手元が震える。
それもまた飲み干される。
地主様の分も淹れたのだが、彼は黙ってこちらを見下ろしたままで動かない。
少しこぼれてしまったお茶がカップを濡らしてしまっていた。
それを慎重に手布で拭いたが、地主様は手を伸ばされてこない。
「客人はしっかり御もてなしするのが礼儀だよ、フルル」
「……はい」
小さな焼き菓子を小皿に取り分けて差し出した所で、がくんと右足が膝から折れた。
大きく身体が後ろに崩れる。
しまったと思ったがどうにも出来なかった。
ただ目を閉じて、腰を打ち付ける瞬間に備える。
「おっと! フルルはまともに立ってもいられないんだね」
「あの、申しわけありません、ありがとうございます」
後ろから抱き止められていた。
慌てて謝って礼も述べた。
早く解放されたくて、一息に言い放っていた。
両手で客人を押しやったがビクともしない。
むしろさり気なく、力を込められた事に言いようの無い恐れが、身体を駆け巡る。