大地主と大魔女の娘


 日が陰ってきたようだ。

 室内に差し込む陽が長く伸びたように感じた。

 どうやら自室の寝台に寝転んだまま、日暮れを迎えたらしい。

 起き上がる気力もないまま、天井を見るでもなしに眺めた。


 装飾も何もない、ただの木目に見下ろされる見慣れた作りだった。


 ――こうやって自室でくつろぐのは、どれくらいぶりになるのだろう?

 思い出そうにも、そんな事はどうでもいいとしか思えないせいか、一向に答えは出ない。

 それよりも目蓋の裏に浮かぶものに浸りながら、こうやって無為に時間を過ごしている。

 浮かんでは消え、またすぐに立ち現れるもの。それに心を押しつぶされそうになりながらも、その甘美な痺れをもっとと望まずにはおられない。

 だから目蓋を閉じ続ける。

 俺だけに注がれていた、眼差しに浮かぶ雫。


 それだけに追いすがっている。

 そうやって時間を使うこと以外、思い浮かばない。

 せっかくの休暇の使い道はそれだけだった。


 久方ぶりの休暇だ。

 ――自宅謹慎と言う名の。


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 熱気が支配する静寂の中、真っ直ぐに目指した。

 俺の求めてやまない存在だけを見つめて。

 そらさないで欲しい等という懇願ではなく、けして逃がしはしないという想いが正直な所だった。

 俺は勝った。

 俺が勝ち進むことを、彼女も願ってくれた。

 だからこそ手に入れた栄光に、少しばかり身を浸してもいいだろう?

 俺は勝った!

 だから……今度こそ、逃しはしない。


 何故か湧き上がってきた想いはそれだった。


「さあ、任命の儀式へと移りましょう!」

「まったく。運のいい奴だね、この騎士は! どうか君……。巫女王よ、落ち着かれますように。体に障るといけない」

「そうじゃな。さ、巫女王様はこちらへお掛けください」


 楽しそうに巫女王様は仰った。心底、はしゃいで喜びに満ちた声だった。

 それを補うスレンの声音はあくまで優しかった。気を遣って神官長は椅子をすすめた。

 彼女を取り囲むように立つ巫女王様は、まっ先に敬意を表さねばならないお方では無かったのか?

 気さくでありながらも懐深い神官長には、まっ先に感謝を表すべき存在という認識は?

 そしてもう一人。

 若くありながらも巫女王様付きの金髪の青年は、いつ何時であろうとも油断してはならない相手ではなかったのか?


 ああ、その通りだレオナル。


 頭の中での問いかけに、頭の中のレオナルが答える。



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