大地主と大魔女の娘
「フルル、今日から僕の屋敷のコになるんだよ」
「嫌、放して!」
ぞっとした。
地主様に視線で縋った。
そういう方向で話が決まっていたという事なのだろうか?
あまり役に立たない、それどころか面倒な魔女の娘を遠ざけるための相談をしていたのか。
「スレン、いい加減にしろ。冗談が過ぎるぞ。放してやれ」
地主様の押し殺したような低い声に、私の方が緊張する。
スレンと呼ばれたこの客人は、何ひとつ堪えていないのは明らかだ。
「嫌だね。放したらこの子は転ぶ」
「聞こえないのか、スレン。放してやれ」
「フルルは可愛いなぁ。子供みたいな身体で、震えながら歩くんだもの。ずっとそのままでいなよね。フルルの良さが解らない誰かさんとは違って、僕が可愛がってあげるから」
「かわ、かわいがる?」
犬みたいに?
何の事なのか。
気がつけば腰にがっしりとした腕が回され、頭のてっぺんに口付けを落とされていた。
もがいたが逃れようが無い。
「うん、そう。うんと綺麗に着飾っておくとしよう。ちゃんと栄養のあるものを食べさせてあげるから、まるまると太るといい。そして夜は一緒に眠ろうか」
「……ぃ、や」
嫌だ。
怖い。
気持ち悪い。
「いい加減にしろ、スレン!!」