大地主と大魔女の娘
『当然だと思う。貴方は大魔女の----の娘なのだもの』
『え……? ど、して、おばあちゃんの真名を知っているの?』
『だって私の姉さまですもの』
『!?』
こともなげにさらりと真実を告げられる。
『という事は、わたくしとも血がつながっているという事よ』
『あなたは、あなたはおばあちゃんの妹、なの?』
『そうよ。一緒に神殿に上がったわ。巫女としてね。そうしてわたくしは巫女の王となり、神殿を去ったお姉さまは森の御方の花嫁となって貴方を授かった』
そう言うと私の手をぎゅうと両手で掴む。
『人と――森のお方との間に授かった奇跡の娘。だからこそ、彼に目を付けられたのね』
彼、が誰を指しているのか。
これも、もはや尋ねるまでもない。
私は口を噤んだまま肖像画を見つめ続けた。
視線を少し左横にずらすと、五代目の巫女王様の絵姿があった。
『ここに記された呼び名以外に、彼女たちも真名があったと思う。それを知るのはただ一人だろうけど』
次に進むべく体を向けた。
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『やれやれ。そんな事をしているから寿命を縮めるんだよ』
振り返ると椅子にスレン様が腰掛けていた。
前かがみで手を組み、そこに顎を預け置いて絵画を見ている。
『残念。見つかってしまったわ』
女の子は寂しげにそう呟いた。
ふっと消えた温もりに目線を下げたが、そこには誰も居なかった。
確かにあったはずの温もりはどこにも見当たらない。
『戻ってもらったよ』
『はい』
『どこに、とは訊かないんだね? さすがに見極めているか、もう』
『……。』
『まったく。油断もスキもないね! ちょっと目を離すと無茶をするんだから。ただでさえ余力も少ないくせにさ。ロゼリットときたら』
『最後だからこそだと思います』
『言うようになったね。いいよ。ロゼリットの最後の望みと言うのなら、ここから先は僕が引き受けよう。座って』
スレン様は立ち上がると私の腕を引き、代わりに座らせてくれた。
そして後ろに立つと、私の両肩を押さえつけるように手を置く。