大地主と大魔女の娘
バタンッと扉が開け放たれていた。
地主様が客人の横っ面を殴り飛ばしたからだ。
当然の事ながら、抱えられていた私の身体ごと吹っ飛んだ。
浮遊感に目を閉じかけたが、次の瞬間には驚きから目を見開いていた。
地主様は客人の腕の緩んだ隙をついて、私の身体をもぎ取るようにして抱きかかえてくれていた。
そしてすぐさま、椅子に腰掛けさせてくれたのだ。
地主様は私に大きな背を向けて、怒りの声を客人に鋭くぶつける。
「スレン、外に出ろ」
「言われずともそうするよ。またね、フルル。ボクは諦めないからね」
(諦めない? 何を言っているの、この人)
ざあっと体中の血が引き下がった感覚に、大きく身体が震え上がった。
「オマエはしばらく部屋から出るな。そして余計な事をするな」
振り返らずにカラス風情がと吐き捨てられたのが、耳に届く。
咄嗟に頭を下げて深く詫びる。
視界の端で彼の表情が歪むのが見えた。
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普通だったら不興を買った召使いは、急いで退室するなりするのだろうが、いかんせん私の足では時間がかかる。
だからか。
彼のほうが出て行った。
そういう事かもしれない。
杖は――?
杖は厨房に立て掛けたまま、忘れてきていた。