大地主と大魔女の娘


 自らベールをはね上げながら答えた少女は……リディアンナだ。

 傍らには神官長が付き添っている。

 それでも心配のあまり、苦しいほど鼓動が高鳴る。


『わたくしこそが新たな巫女王としてふさわしいわ。スレン様?』


『リディ……。君は何を言っているんだい? 君みたいな子供が。こんな時間に、こんな所に来ちゃいけない。そうだろう?』


 首を横にうち振りながら、スレンは否定した。

 否定と言っても弱々しい。

 対してリディアンナの眼差しは強く、引くことはない。


『いいえ間違いありません。わたくしはね、スレン様。貴方が触れた時から目覚めているの』

『リディ?』

『貴方が幼いわたくしを抱き上げてくれた時に、全てとはいかなくても――流れ込んできたわ。貴方が過ごしてきた時が』


 リディアンナが歩み寄ると、スレンは身を引いていく。

 まるで触れられるのを恐れているかのように。その背後の影たちも一緒だった。

 そんなスレンに追いすがるように、リディは手を差し伸べながら近づいて行く。


『そこにはわたくしが、かつてのわたくしの姿もあったの。

 本当はスレン様も気がついているのでしょう? 

 かつてのわたくしを、その女の生まれ変わりがわたくしであると。ねえ?』


 大きく息を吸い込んで瞬き、リディアンナは歌うように口にした。


『朽ちかけた神木(スイレイン・ボルドナ)』


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『……リルディ・アン!!』


 ついに祭壇まで追い詰められたスレンが、歯を食いしばりながら唸った。


『ええ、そうよスレン。お久しぶりね。わたくしを憎んでいて?』

『リルディ・アン。人の身でありながら最強の呪術者であった者』

『聞くまでもないわね』


 スレンの抑揚のない言葉に、リディアンナは小さく笑った。


『ふふ。そうよ、わたくしよ。あなたをここに縛り付けた女の魂が、今再びあなたの元へと舞い戻ったの』

『違う! 違う! 違う!!』




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