大地主と大魔女の娘
『ねえ、レオナル。君だってそうだよ。フルルを置いて逝く事になるんだよ、
時に連れ去られゆく肉体の持ち主。大魔女と森の存在との奇跡の子に、
それはひどく残酷な事をしでかすんだって解っているのかい?』
腕の中に大事に抱えたカルヴィナが、小さく身じろいで俺を見上げてきた。
その不安そうな瞳にしっかりと頷いて見せる。
『そんな事はない。どうにかしてみせる』
『何それ!?』
ハッタリではなく、本気だった。
『本気だ。きっと、どうにかしてみせる』
言い切り、涙を溢れさせ始めたカルヴィナの頬に唇を寄せた。
『そうよ。だから、貴方もいい加減に諦めて覚悟して下さい。この手をとって?』
『……嫌だ』
強情なスレンに、リディアンナは痺れを切らしたように叫んだ。
『もう、ここは任せて叔父……シュディマライ・ヤ・エルマ様。後は、打ち合わせ通りに!』
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そうだ。
我はシュディマライ・ヤ・エルマ。
疾風まとって動く暗闇。
出来ることは、それだけであろうとも構わない。
『レオナルさま』
寄り添い、支えてくれる小さな身体に感謝する。
幼いながらも、自分よりも遥かに大きな存在に向かい合おうとする後ろ姿にもだ。
それと同時に驚きを隠せない。
彼女たちの華奢な身体にひそむ力を敬う。
だから祈る。
どこに何かにかは分からない。
それでも力を貸してくれと痛切なまでに願った。
咳き込みながらも息を吸い込み、叫ぶ。
『シュディマライ・ヤ・エルマが命じる。来れ、水底の鏡(シャンティ・スラハ)!!』