大地主と大魔女の娘
★ ★ ★
赤ん坊はよく眠っている。
金茶色の髪が陽射しを浴びて艷めいている。
『ジルエール』
古語できらめきを意味する名を与えられた赤ん坊に、触れる。
赤ん坊の瞳が開かれた。
目蓋の下から現れたのは、はっきりとした緑色の眼だった。
「あ」
「あっ」
――ふえええええっぇ!
「あ~あ。泣いちゃった」
「あらあら。おっきしちゃいましたね、よしよし」
わたわたと慌て出す父親に代わり、レユーナが赤ん坊を引き受けた。
「まったく。せっかく慎重に連れてきたのに~。おしめもミルクも済ませてさ」
「……。」
「はじめまして、ジルエール様。ふふ。元気がいいこと」
小さな体から上がる大きな泣き声に、妻はうろたえる事もなく笑っている。
「フルル、さすが。ちょっと見直した」
「まあな。そこは当たり前というか」
「レオナルを褒めたんじゃないよ」
スレンが憎まれ口をたたく。