大地主と大魔女の娘
★ ★ ★
「ちちうえ。ははうえ。あっ、スレンさまだ」
騒ぎを聞きつけたらしい息子が駆け寄ってきた。
「レナード」
「あ。また、うるさいのに見つかっちゃったなあ」
言いながらも、スレンはまんざらでも無さそうだった。
「スレンさま、いらっしゃい。ははうえ、その子は誰?」
「ジルエール様よ。静かにね。ジルエール様、レナードです」
「……小さいや」
「あなたもこうでしたよ」
「う、ん……。かわいいね」
おっかなびっくりといった様子で覗きこみ、レナードはじっと赤ん坊を見つめている。
「ジルエールは誰にもやらないからね」
「スレン」
早速、娘は誰にもやらないと言い出す父親に呆れた。
「うん?」
レーナドはよく解らないままに頷いている。
「ふふ。あっ、痛っ!」
「レユーナ?」
「ははうえ!」
「フルル、どうしたの?」
急に痛みを訴えたレユーナに驚く。
慌ててジルエールを引き受けると、妻はふくらんだ腹を包み込むように撫でた。
「イタタっ、もう。お腹の子が蹴るんです。大丈夫。きっと自分も話に加わりたいのでしょう」
そう言いながら愛しそうに撫で続けている。
「ははうえ。赤ちゃんはジルエールみたいにかわいいよね。僕、待ってる」
レナードも小さな手のひらで、母親の腹に触れた。
「もうじきですよ」
レユーナがゆったりと微笑む。