大地主と大魔女の娘
★ ★ ★
「いいなあ、レオナル」
スレンがしみじみと呟いた。
「いいだろう」
「僕にだってジルエールがいるもんね。返してよ」
「もう少しいいだろう」
「もうだめ。僕が落ち着かないから返して。と、いうよりもそろそろ帰らなくちゃ」
「そうか」
「うん。またね」
手放しがたい重みを名残惜しく感じながら、そっとスレンへと預ける。
赤ん坊は大人しく、自分の指をしゃぶっている。
★ ★ ★
「スレン」
「うん」
リディアンナの話しでは、スレンはこれで自由になったはずだった。
能力ある異類との婚姻の果てに、その血筋の者を得ること。
それがかつての契約のひとつであったのだと、リディは教えてくれた。
これでスレンは神殿に縛られる事も無くなる。
身ごもった嬉しさと、スレンを失うという悲しみを打ち明けてくれた巫女王は、昔から知る姪っ子のままだった。
だが、スレンはこうしてリディアンナと赤ん坊の側にいる。
「まったく。何が解放だよ。こんな宝を置いて誰が自由になんて飛んでいける?」
俺の口に出さない疑問を、見透かしたようにスレンは答えた。
「やっぱり、最強の術者だよ。リルディ……リディアンナはさ!」