大地主と大魔女の娘
言い伝えの謎
『何か違って伝わってゆく話を伝説という……?』
★ ★ ★
「ねえ、兄上。どうして毎年、誰もいない湖に樽ひとつ分のお酒を置きに行くんだろう?」
毎年の恒例行事に、ついに気がついてしまったらしいアルフレドが言い出した。
その顔にはありありと、抑えきれないワクワクが浮かんで見える。
「毎年、湖に住まう凶悪な魔物を鎮めるためだって、父上は仰っていた」
なるべく怖がらせるために、おおげさに言ってみた。
だが、逆効果だったようだ。
「へんっ! 魔物なんて怖くない。俺たちで沈めてしまえばいい!」
「……しずめる、の意味が違うと思う」
「何だよ、兄上の弱虫。いいよ! ボクだけで今夜、湖に行く!」
「それは駄目だ」
「……。」
「母上が心配する」
「じゃあ兄上も来てよ」
「……。」
好奇心には勝てなかった。