大地主と大魔女の娘


『子供は酒が飲めないのだったな』


「うん。僕たちはいらないよ」

「それに、それは魔物殿のだから。それより、続きを話してくれ」

 うむ、と魔物殿はひとつ頷くと語りを続けた。

『そこであわやという所で我が登場し、お前たちの父の危機を救ったのだ!』

「ええ! 本当っ!? すごいや!!」

 弟も目を輝かせて聞いている。

 父上の冒険。母上が母上になる前の出来事。

 それらを聞くのは本当に、本当に、ワクワクした。


 ★ ★ ★


 まあ、一角の君。

 すみません。

 この子達ったら、もう! 心配かけて!


 ――母上の、声だ。


 恩に切る。

 まったくこいつらは。

 後で叱っておく。


 ――父上の声もする。


 ふん。

 まあ、良いひまつぶしになったわ。


 ――魔物殿?


 でも眠くって目が開けられなかった。


 ★ ★ ★


 よく朝、少し寝坊してしまった。

 いつの間にかいつもの部屋に居た。

 父上も母上も何も言わない。

 夢だったのだろうか?

 弟にも聞いたのだが、何も覚えていないという。

 そんな馬鹿な。

「……。」

 また抜け出して確かめてやろう。

 今度は一人で。


 ★ ★ ★


『何しに来た』

「続きを聞きに」

 ずいっと酒瓶を差し出す。

 父上のところから失敬してきた。

 魔物の耳がピン! と立ち上がった。

 しかし思いなおしたように、小さく首をすくめた。

『さて? 何のことやら』

「……じゃあ、帰る」

『酒は置いて行け!』

「……。」

『わかった! わかった! ったく、貴様には術は効きにくいようだな』

 それから俺には変わった友人が出来た。


 とても永く生きていて、色んな事を知っている友人が。


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