大地主と大魔女の娘

魔女の娘と町の人々



 私が森に捨てられた娘らしい、というのは物心付く頃には知っていた。

「オマエは黒髪(カラス)だから、親にも気味悪がって捨てられたんだろう?」

 尋ねるような語尾上がりに、赤ん坊の頃の記憶を持たない私は答えられずにいた。

 あえて尋ねるまでもない。そうに違いない、とその口調は告げていた。

 親にも捨てられるほどのカラス娘。

 鳥の方のカラスに生まれてこれれば良かったのだが、残念ながら人間の娘だった。

 ならばカラスは森に返すのが道理というものだろう。

 恐らく私の生みの親とやらもその道理に従ったらしい。

 そうして私は大魔女の娘になった。

 カーラス カラスー まっくろ 黒い カラス むすめー 森に帰れー

 小さい頃、よく村の男の子たちにそうやってはやし立てられた。

 その後、決まって一人取り残された。

 走り去って行く後姿を見送りながら、何ともいえない気持ちに襲われるのが常だった。

 カラスは人の子の仲間には入れないらしい。

 その度に不安になって、おばあちゃんに尋ねたものだった。


「私は、おばあちゃんの本当の娘ではないの?」


 少し声が震えたのを今でもはっきり覚えている。


「おまえは森から授かった娘だ。誰のものでもありはしない。でもね、おまえは私の宝に違いないよ」

 おばあちゃんはいつもそう言って、優しく頭を撫ぜてくれた。

 それだけで充分だった。

 そう。私は森の恵み。大魔女の娘――。


 そう思えた。
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