大地主と大魔女の娘



 あてがわれた豪華な部屋の衣装棚の隅に、たたんで置いた私の服に着替えた。

 薄い灰色の布地は地味で目立たない。

 それでいて、今この部屋にあるせいか変に目だっている。

 まるで今の私みたいだ。

 それでもこれは私の服だ。

 そりゃあ、裾は少し繕ってあるが頑丈だ。汚れも目立ちにくい。何より軽くていい。

 着慣れているから身動きも取りやすい。

 魔女の作業にはもってこいの、昨年手縫いで仕立てたばかりの私の服。

 それなのに。

 地主様にそれは捨てろ、と言わしめた一品だ。

 冗談じゃない。

 これを捨てたら、あとは残してきた服を入れて二着しかなくなる。

 私にずっと下着のままでいろと言うのか。

 そう泣いて訴えたら唸るような声で、好きにしろというお言葉をもらった。

 地主様と違ってこれから先、たくさん衣服を用意できる訳が無いのに。

 どうしてそんな事もわからないのだろう?

 やはり、財力に恵まれた方は感覚も違うのだとつくづく思った。

 魔女の正装はこれくらい軽やかでちょうど良い。

 あんまり裾が長くても、飾りが多くてもよろしくない。

 私にはこれがとても良く似合う。

 ジルナ様も地主様も、解ってはおられないのだ。
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