大地主と大魔女の娘
ここに来てから、いくらでも暇があったので、こさえた肩掛けの鞄が役に立つ時が来た。
いつか薬草採取のお許しが出た時のためにと、一緒に用意していたショールを頭から被った。
大きめに作っておいて良かった。
日除けにもなるし、何よりこの黒髪を覆い隠してくれる。
さあ、準備は万端だ。
いつまでも泣いている自分なんかではありたくない。
優しくしてくれたジルナ様やお姉さんたちには、申し訳ないと思ったから手紙を残す事にした。
『お世話になりました。
ありがとうございました。
生涯 忘れません。
これ以上 ご迷惑をお掛けしないためにも出て行きます。』
そう、ジルナ様とお姉さんたちを思いながら綴った。
「……。」
最後に地主様へも一言添えるべきだろうと思ったので、こう付け足した。
『足りない税金は、働いて必ず納めます。 さようなら』
うん、これでいい。
自分の言葉で伝えたかったので、あえて古語で書いた。
その分しっかり気持ちを伝えられた気がして、すごく満足できた。
よかった、よかった。
これ以上、煩わしい想いをさせないためにも、しないためにも、早く出て行こう。