大地主と大魔女の娘


 ふらふらとお勝手の裏口を目指し歩く。

 もう答えが出る前からここを目指していた気がする。

 あえて言葉による変換をせずとも、自ずと答えは出ていたというワケだ。

「おはようございます」

 早朝、野菜を届けに来てくれるおじさんとは幾度か言葉を交わし、すでに顔見知りだ。

「おお、おはよう! どうしたね、お嬢ちゃん?」

「あの、地主様のお使いで街に行きたいの。一緒に乗せて行ってくださいな」

「ああ、いいよ! なんだい、早くに? 買出しかい?」

「そうなの。でも内緒のお使いだから、これ以上は教えられないの」
 
 そう。内緒で出稼ぎに行く。嘘は言っていない……としよう。

「いいけれども帰りはどうするんだい? 誰か迎えに来てくれるのかい?」

「……ええ、大丈夫。心配いらないわ」

 にこっと笑って見せたら、おじさんは安心して信用してくれたようだった。

 そのまま荷馬車に乗り込んだ。

 がたごと揺られているうちに、街だ。

 街に来るのは久しぶりだ。

 お礼を言って馬車を降りる。

 せめてとなけなしの小銭を差し出したが「ついでだからいらないよ!」と受け取ってもらえなかった。

 何度も頭を下げて、馬車を見送った。

 おじさん、ありがとう。助かりました。

 街も賑いだしていて、お店がたくさん出ていた。

 人もたくさんたくさん、行き交っている。


 ぶつからないように注意しながら歩く。
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