大地主と大魔女の娘
「痛……っ」

 うずくまって見上げた先に、大きく覆いかぶさるような人影に言葉が出てこなかった。

 久方ぶりに間近で見た。


 大地主様だ。



 とても身体が大きくてがっしりとしており、いつも上等と解る服を着ておられる。


 今日だって朝からとてもきっちりとした物を御召しになっている。

 下着一枚の私とは雲泥の差だ。


 おそるおそる、その濃紺の瞳を窺うように見上げる。


 そこにあるのはただ侮蔑の色。


 険しい表情をしておられる。


 髪とお揃いの薄茶色い、整えられたお髭のあるお顔。


 それは、とっても偉そうに見えて、私はただただ平伏すしかない。

 この方には気に入られていない。


 それどころかむしろ盛大に嫌われている。


「お、おばあちゃんに心配をかけるといけないので、お暇(いとま)します」

 転がった杖をこちらに寄せようとして、それから止(とど)まった。


 言ってから思い出した。


 おばあちゃんはもういないのだった。どこにも。


 この世のドコにも。


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