大地主と大魔女の娘


 
『きちんと食べないから貧相な体つきなんだ。しっかり食事を取れ!』

 そんな言葉が蘇って思わず辺りを見渡してみた。

 大丈夫。地主様の影は見えない。

 ちらと、道行く人たちをショールの影から窺ってみる。

「……。」

 皆、女らしい自信に溢れて見えた。

 それに比べて自分の体つきの何と頼りない事か。

 確かに地主様の仰るとおりで間違いが無い。

 ショールを深く被り直して、前身ごろを合わせた。

 歩きながら言われた言葉に真実を見出す。


 少しでも対処できないものかと考えてもみる。

 たくさん食べればどうにかなるだろうか?

 そもそも、食料調達すらままならない状況だ。

 そういえば、今までどうやってきたのだったかしら?


 いつも、いつも、与えられてきたのだったと思い当たる。

 森からも、村の人からも。そして地主様の所でも、同じだった。

 与えてもらってきたのだ。

 それを当たり前のように受けてきただけだ何て、バチ当たりなんだろう。

 本当に私は食事を取る価値も見当たらない。

 それでも、きちんと食べて元気でいよう。

 そしていつか、与えてくれた人々に報いれるようになろう。

 そう。いつか、きっと。尊敬するおばあちゃんのようになろう。

 私はなるべく早く、おばあちゃんみたいになりたかった。

 威厳があって、堂々としていて、何でも知っていて、何にも動揺したりしなかった。
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