大地主と大魔女の娘


 自分の死期が近いと覚(さと)っていてさえも、おばあちゃんは森の大魔女だった。

 いつまでも悲しむ、私だけが未練がましいのかと泣けてくる。

 しかし、いつまでもそれではあまりに情けない。

 おばあちゃんだったら、どうしただろうか?

 きっと前を見据えて歩みを止めなかったと言い切れる。 

 だから歩こう、と面を上げる。

 地主様に今までの分の税金を納めねばならないのだ。

 何より食べていかねばならない。

 そのためにもお金が要るのだ。

 まずは働き口を探そう。

 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・

「仕事、世話してやろうか?」

 突然声を掛けられて振り返ると、やせぎすの男の人がこちらを見ていた。

 格好はあまり上品とはいえない様な、着崩したシャツの胸元は肌蹴ている。

 編み上げた長靴で足音を立てないまま、私をじろじろ見ながら近付いてきた。

「仕事、探してるんだろ? なあ」

 頬はこけていて、その眼光だけが鋭く嫌に目立つ。

 地主様と同じような髪と瞳の色なのに、酷くくすんで見える。

 ここがあまり日が射さないせいばかりではあるまい。

「ついて来な」
< 61 / 499 >

この作品をシェア

pagetop