大地主と大魔女の娘
地主と暴れる男たち
「お嬢さんは自分がどうして出てきたのか、わかっているんだよね?」
はいよ、と温かなお茶の入ったカップを手渡されるのと、質問は同時だったのでいささか反応が遅れた。
もちろんだ。
こっくりと頷く。
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地主様に嫌だ帰らないと泣いて訴えていたら、
いつの間にか人だかりが出来ていた。
それをとりなしてくれた、おかみさんが優しく微笑み掛けてくれた。
つられて微笑むと、少し驚いたように目を見張られた。
濃い紫色の瞳は、春の野辺のスミレの色だった。きれいだなと見入った。
おかみさんの家は飴やお菓子を売っているそうだ。
お嬢ちゃんは広場を抜けた先の神殿に行った事はあるかい?
女神様への捧げ物に、うちの飴も一役買っているんだよ。
何、行った事が無いって?
そうかい。後で、見にいくかい?
神殿前の広場には市も出ているんだよ。
通ってきたって?
何か買った? え、パンを。そうかい。
道々、歩きながら色々説明してもらった。
小さい子にするように手を引かれ、お店につれて来てもらった。
扉を開くと、カラランと鈴が鳴る。
甘い香りに出迎えられて、ほっとした。
ささくれ立っていた心も少し落ち着いた気がする。
そのまま手を引かれて、お店の奥の方に案内された。
「わたしは店番しとくから。まずは二人とも、お嬢ちゃんを任したよ」
「ありがとう。交代でやろう」
「当然!」
三人いるおかみさんのうち、一人のおかみさんはそういって手を振った。