大地主と大魔女の娘
「私が彼の側にいると、あらぬ誤解をされてしまうようで、迷惑をかけるのです」
「誤解?」
「はい。私のような娘に、誰がなびくかと仰っておられました」
「旦那はそんな事を、言ったのかい。まさか!」
「足を引き摺って歩く障害者で、みすぼらしいと」
「……。」
「ええと。それでなくとも私は、真っ黒のカラス娘なので、くだらないそうです」
ふいに涙が零れてしまった。
ぽろ、ぽろと。
慌てて頬に手を添えた。
涙が零れるたび、胸が痛い。
胸が痛むから、涙が零れ始めたのだろうか?
胸にも手を当てる。
「っだよ! それ! あのおっさん、やっぱり殴っておけば良かった!」
急に少年が声を荒げたから、身体が跳ね上がってしまった。
「ルボルグ! 母ちゃんもちょっぴり同感だけど、暴力は駄目だからね」
「わかってらぁ」
「言葉も使い方を誤まると暴力だからね。心しなよ?」
「わかったよ」
「お嬢ちゃん、悪かったよ。辛いこと、無理やり思い出させて……。コレ飲んで、これをお上がりよ」
そういってお菓子を手渡された。
やっぱり小さい子にするみたいにされて、少し笑ってしまった。
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「じゃあ、おばちゃんちの子になるかい?」
「え?」
「住み込みで働くかい?」
「はい!」
「おや。良い笑顔だ」
おかみさんに苦笑されてしまった。
「はてさて、困ったね~。ためらいなく頷かれちまったよ」
「足は悪いから走れませんが、歩けます! 一生懸命働きますから」
「ああ、いやいや。違うんだよ。あんたに困ったと言っている訳ではないんだよ」
「あの若旦那に、後であんたを迎えにおいでって言っちゃったからね」
「大丈夫です。私の身のふり方を聞いてもらったら、きっと納得して置いて行ってくれます!」
「あやや……。言い切るんだねぇ」
「はい」
「あのね~? あの旦那にとってお嬢ちゃんがただの召使いだったとしたら、最初から迎えになんて来なかったと思うんだよね。おばちゃんは」
「それは、お金を納めないまま逃げ出したと思われたから、探しに来ただけだと思います」