大地主と大魔女の娘


ふいに名を呼ばれ、遠慮がちに頬に手を掛けられた。

 俯いていた顔を上げさせられる。

 触れられた事でより一層、彼が感じているであろう疼きにもう一度尋ねずにはいられなかった。


『どこが痛いのですか?』

 ショール越しに彼の吐息が額の上、前髪の生え際を掠めた。


 途端に周りから大きな声が上がった。


「おおおおお!!! 何だよ、何だよ! 旦那―――!!」

「俺が悪かった! 旦那の大事な嫁っこには、触らせませんってか!? なあ、みんな?」


「羨ましいぜ、こんちくしょう!」

「若いっていいなあ」


 その時は本当に周りの目を忘れていた。


 きっとショールに包まれていたせいだと思う。

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