大地主と大魔女の娘
地主様から許可を取ったおかみさんに誘われて、二階の部屋へと案内された。
当然、少し時間が掛かった。
気持ちばかりが急いた。何せ許された時間は半刻と僅かだ。
歩みの遅さで取られるなんて、何てもったいないのだろう。
「悪いねぇ。ここは流石に、地主様をお通しするにはいささか庶民的過ぎなものだから」
おかみさんはそう言って悪がったが、そんな事はけっして無かった。
「いいえ。私はとても落ち着きます」
二階がおかみさん達の生活の場であるらしい。
開け放たれた窓からは洗濯物が風に揺れている。
気持ち良く吹き込む風は、先程港で吹かれたものと同じで、少しだけ海の香りがして目を細めた。
床には大きな木箱が置かれ、乾いた土のついた芋が山積みでいくつかは直に落ちていた。
真ん中に置かれたテーブルには、カップが三つ置かれたままだった。
促がされるまま椅子に腰掛ける。
「ルボルグ。ちょっと向こうに行ってな」
「……。」
「ルボルグ」
物凄く不服そうに、ルボルグ君はふてくされた顔をした。
でもおかみさんの真剣な表情に押されたのか、素直に私から手を離すと階段を下りて行く。
扉が閉まる。
おかみさんも目の前の椅子に腰を下ろす。
足音が完全に遠ざかってから、おかみさんは私に向き合って口を開いた。