女子の失敗

…ドミノ倒しみたいに、倒れればいいのに。

人で溢れかえる駅の構内。そんなことを思う。

人、人、人。さっきからちんたらしか進めやしないし、何回腕にぶつかれば気がすむんだっつー話だし。

仕事、しかも残業代の出ない残業を終えたばかりの頭の中は荒ぶっていて、穏やかな事象が一つも思い浮かばない。


わたしの目の前の人、全員倒れればいいのに。

一気に。バタバタバターって。そしたらあたし、その上スッタスッタ歩いていくのに。

スッタスッタっていうより、グニッて皮膚に沈む。だって。

今日の足元はピンヒールだから、きっと踏まれた方はだいぶ痛い。

てかピンヒールって、凶器。足を長く見せるとかじゃなく。今まで起こった殺人事件、および未遂事件を遡って見てったら、絶対ピンヒールで人を殺してるやつ、いると思う。

だって世の中、いろんな人がいるわけだし。

実際、今乗り込んだばっかりの電車の中だけでも、こんなに大勢のニンゲンがいるわけだし。


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