女子の失敗
"今さら気恥ずかしいしなぁ、やりにくいやろ。"
おれも、おまえも。付き合いはじめ、元岡はそう言って、初めてあたしの手を握った。
別に言えばいいのに、知ってほしいかもなのにって思ってたけど、うんそうやね。そう答えた。
自然に繋がれた手が、嬉しかったから。
あたしたちは、趣味が全く合わなくて、考え方も違っていた。
それが惹かれた理由で、うまくいかなかった理由だったと思う。
喧嘩を、たくさんした。
根本を解決しないまま、抱き合ってうやむやにした。
元岡はセックスに持ち込むのが上手で、セックスも上手くて、あたしは友達の頃には知らなかった元岡に、溺れた。
耳に直接注ぎ込まれる元岡の声に、あたしはめっぽう弱かった。
明るみに出ない、布団に埋もれていく関係。
不安だった。心は繋がっている気がしなくて、元岡の気持ちがわからなくて、知らない元岡が怖くなって。
あたしから別れた。
みんなに言ってなくてよかった。そのとき初めて、そう思った。
みんなが知らないうちに付き合って、知られないまま別れて。
なんだか気まずくて、でも気まずくないふりをして、いま。
「……ぁ」
聞こえないような声で、小さく呟いていた。
脱衣場のカゴに脱ぎ散らかされた、元岡の服。
その上に、青いタオルが置き去りにされていた。