女子の失敗

スッタスッタ、の音が止む。

立ち止まって、後ろを振り返る。

向かい合って、目が合って。

携帯の通話は繋がったまま、生身の声があたしに飛ぶ。


「……お前なぁ」


呆れたような笑い顔。

ふわふわの髪の毛は、いつもよりちょっとだけ乱れてて。

もしかしてそれは慌ててあたしを追いかけてきたからで。


そう思ったら、鼻の奥がツンとした。


「…好きって言ってよ」
「……はい?」
「言ってくれたら、許す」


精一杯、睨み付けて言った。

じゃないと、嬉しくて恥ずかしくてホッとして、そんな気持ちが、にじみそうだったから。


「お前から言えよ」
「~はっ!?」
「じゃないと一生言わん。カウントダウンー、さん、にー、いち…」
「~あーもうっ!!ハイハイ好きですってば!!」


あー…いかん、


「うん、俺も」


こぼれる。


「…っ…ずるい」
「ははっ」


近寄ってくる。
スッタスッタじゃない、ペタンペタンと。

やる気なさそうな、ボロい彼のサンダル。

ひゅっと、鋭く細く息を呑む。手首を握られた瞬間。

おでこがコツンとぶつかって。


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