花
満も そうだったし、蓮も そうなのだが、
色々 話していると、
その人の″背景″が、何となく見えてくる。
しかし貴史は、
何度も話している筈なのに、
なぜか全く、見えなかった。
人当たりも良いし、いつも笑っている貴史は
明るくて楽しいし、優しいし、あたたかい。
しかし、一見 冷たく見えたり、人間味が無いように思えるのは、
その容姿の所為も あるかもしれないが、
圧倒的に、″背景″が見えない所為、だろう。
今に なってみると、
満は居なくなったのにも理由が あったのだろう と、色々 推察 出来るのだが、
貴史が もし今 居なくなってしまったら、
その理由は全く見えないと、思った。
まるで本人が無意識に造り出す、
壁のような物が あるかのよう、だった。
その″壁″と同じような物を、
和は香澄にも感じていた。
それが、貴史とは全く別の人なのに、
なぜか貴史と似ていると思わせるような雰囲気を、
醸し出していた。