花
「…″誰″って…、
満くんも知ってる…よね?
同じクラスだった、″宗谷 貴史″くん」
「ううん。
俺 居た時は、そんな人 居なかったよ。
同じ学年でも…、聞いた事ないし」
君の方が忘れている としか、思えなかった。
君は さっきまで ずっと、この学校に居なかったんだから…。
暫く前のクラスメイトの顔を1人1人 覚えている方が むしろ すごい と 思うから、
君が忘れるのも、自然な事だと、思う。
でも、″宗谷 貴史″という人が最初から居なかったかの ような君の反応に、
私は不安を拭えなかった。
いつかの″あなた″の言葉が、私の頭の中を ぐるぐる と、回る。
あなたが″記憶を操作″したのなら、君の反応も納得できる けれど…。
「…本当に、覚えてない?
″宗谷 貴史″くん。
満くんと同じ位の身長で…」
「…うん、知らない」
君が、嘘を吐けない人だって いうのは、知っていた。