花
「…ムニー先輩は優しい、ですね…」
思わず口を突いて出た言葉に、
蓮は照れたような笑みを浮かべて、言った。
「いやぁ、そんな事ないよ~」
…その顔が可愛くて、心が ほっこり して…
気付いたら、和は蓮に呼び掛けていた。
「…先輩?」
「ん?
何~?」
「…先輩は優しくて、明るくて…、
周りの人の心を和ませる、
太陽みたいな…人ですね」
一瞬、口に出してから
和は なぜ こんな事を言い出したのだろう、と思った。
しかし何故なのか、口は止まらなかった。
和は そのまま堰を切ったように、喋り出していた。
「先輩 見てると、心が あったかく なるんです。
嫌な事が あっても、心が軽くなって癒されて…。
先輩は ほんと、太陽だと、思います。
…………私、ほんとは今日、色々あって落ち込んでたんです。
でも、先輩と話してたら、何て言うか…」
そこまで言って、
ようやく口は止まった。
頭の中で冷静な もう一人の自分が、
″こんな事を言って どうするのか″と、言っていた。
だから先輩が好きで、ずっと一緒に居たい とでも言うつもり なのか、と。
″だから″の先が言えない台詞を、なぜ自分は言い出して しまったのか、と。
「和ちゃん、ありがとう。
和ちゃんに、そう言って貰えて、すげー嬉しいよ♪
…でも…、」
蓮も気付いた、のかも…しれなかった。
和が蓮に それ以上の感情を持っていない事に。
でも、と言い掛けた蓮は、悲しそうに微笑んだ。
「でも、和ちゃんが一緒に居たい人は、
別の人、みたいだね…」