花
「…和ちゃん!」
次の日、ぼーっ と していた所為で、
凛が教室まで来ていた事に、和は気付かなかった。
凛が和を見つける前だったら、また逃げ出せたのに、
教室に来て名前まで呼ばれたら、無視をする訳にも いかない。
只でさえ、お昼休み。
いつも中庭に行く和が教室に残っているのは、不自然だった。
…教室に貴史の姿は、ない。
教室のドアの外に立つ凛に向かって行って
「私に用なの?」と、訊いた。
″宗谷くん…じゃなくて?″という意味を込めて凛を見ると、
凛は一瞬、不思議そうな顔をした。
「何 言ってるの?
和ちゃんに用に決まってるでしょー!?
…蓮 先輩から聞いたよ!
ちょ…詳しくは中庭で話すから、とりあえず来て!」
ファンクラブの女の子達が凛に気付いて ひそひそ と 話し始めたのを見て、
凛は和の手を引っ張った。
中庭の いつもの指定席に蓮の姿は無く、
和は今更ながらに現実を突き付けられたようで、悲しくなった。
「…はぁ。
ここなら いいかな…」
いつもの指定席のベンチに腰掛けて、凛は溜め息を吐いた。
「…和ちゃんも、座って」
立ちっ放しの和に そう言った凛は、
どこか疲れたような顔を、していた。
「…さっきの話の続き、だけど。
蓮 先輩から聞いたよ?
和ちゃん、大丈夫…?
悩み事とか あるんだったら、
遠慮しないで何でも私に話してね」
「…え…何、それ?」
予想外の言葉に、和は思わず聞き返した。