白いジャージ9 ~最終章~
「本当にそうだね。そこでムスっとしてる人なんて、全然魅力的じゃない」
「だろ?楽しそうに笑ってる声が聞こえたからって、心から楽しんでると思うか?ただの付き合いだよ。それくらい、お前が一番わかってるくせに」
豪太は何でもお見通し。
ふたりきりでこんなに話したことはないし、いつも出勤途中で話すくらいなのに、本当に私のこと、先生のことをわかってくれていた。
「お前がもしもだよ、ホストクラブに行ったとする。あんまり気が乗らなかったとしても、楽しく話すだろ?」
「うん。そうだね。せっかくその時出会ったんだから、楽しく話そうって思うよね」
「そうそう。ただ、それだけのこと。もし、ホストクラブに行くことを知ったとしたら、旦那さんは“せっかくだから楽しんでこい”って言ってくれると思うよ。でも、俺のことは忘れんなよってこと。キャバクラでめちゃめちゃ楽しんだとしても、その場だけのこと。心の中にはずっと奥さんがいるし、どうやって説明しようかな~なんて考えてたと思うよ」
豪太の言う通り。
先生は、ずっと私のことを気にかけてくれていた。
だから、電話もしてくれたんだ。
あの電話がなかったとしても、先生はちゃんと私に説明してくれていた。
そういう人だって知ってるはずなのに。