白いジャージ9 ~最終章~
「先生と結婚してるんだよね、矢沢さん」
改めて言われると、返事に困る。
「大変でしょ?いろいろ心配じゃない?」
荒木さんの横顔を見つめる。
「うん。そうだね。私、すぐにやきもちやいちゃうから」
「そりゃそうだよ。女子生徒に毎日囲まれてるんだから心配になるよね」
荒木さんは遠くを見つめたままそう言った。
まだ心を開いていない私達。
本当に話したいことはこういうことじゃない。
「今日、来るの辛くなかった?」
私がそう言うと、驚いた顔をして荒木さんは私を見つめた。
大きな目。
高校生の頃、この目が苦手だった。
荒木さんと目が合うと怖かったんだ。
私とは全然違う積極的な荒木さんは、いつも先生を追いかけていた。
私は何もできなかった。