白いジャージ9 ~最終章~
黙っている俺の肩をコツンと突っつく親父。
「なんだよ」
「良かったな。直ちゃんに出会えて」
そんなことを言うもんだから、俺も語りたくなってしまった。
「直のおかげで、俺の人生は変わった。直に出会っていなかったら、俺はどうなっていたんだろうって思います」
3人は、窓の外の大きな木を見つめていた。
ライトアップされた木はとても美しかった。
「和人にも悪いところはあった。だけど、彼女はひどかったよ。和人はもう一生結婚しないと思っていたし、心を閉ざしているように見えた」
親父とこんな話をするのは初めてだった。
あの時、俺は相当落ち込んでいて、あまりそのことについて話していなかった。
その後は、あの一件がなかったかのように、両親共にその話題を避けるようになっていた。
俺自身も思い出したくなかった部分もある。
だけど、やっぱり七緒のことは大事だし、会いたいと思った。