白いジャージ9 ~最終章~
「なぁ、直。さっき、風呂で話してたんだけどさ」
先生は立ち止まり、月を見上げた。
今日の月は、おぼろ月。
幻想的な月を見つめながら、先生の手の温もりを感じていた。
「俺を救ってくれたのは直なんだなって」
「どうしたの?」
「直に出会ってなかったら、俺は誰とも結婚していなかったと思う。それに、誰も愛せなかったと思うんだよ。本当に感謝してる」
目を見て、真剣な表情で言ってくれた。
「なんだか照れるね」
「俺の親も、直に感謝してる」
「うん。さっきね、お風呂で先生のお義母さんと話したんだ。お互いに本音をぶつけ合えた気がする。すごく嬉しかったの」
私と先生は、お風呂の中での会話を報告しあった。
止まりそうなくらいゆっくりと歩く。