白いジャージ9 ~最終章~
「新垣先生、携帯鳴ってるよ」
喜多先生が、ソファに置きっぱなしだった俺の携帯を指差した。
もしかして!!
俺は急いで電話を取った。
「もしもし」
直のお母さんからだった。
陣痛が始まったみたいだから、産婦人科に向かっていると。
タクシーの中だった。
直の声がかすかに聞こえる。
とても苦しそうな声だった。
まだ大丈夫だから、急がなくていいと言われた。
「俺、ホームルーム終わったらすぐ失礼します!」
「おう!頑張って、背中さすってやれよ」
喜多先生に思い切り背中を叩かれた。
「はい!!また連絡します」
落ち着け。
落ち着くんだ。
自分にそう言い聞かせながら、教室へと向かった。
神様。
どうか、無事に赤ちゃんが生まれますように。
直も空も、元気でありますように。