白いジャージ9 ~最終章~
『おい、新垣~!お前と話したいって子がいるからこっち来いって』
『もう俺飲めないよ。フラフラだって』
そう言いながらも先生は席を移動しているようだった。
何度も切ろうと思ったけど、切れなかった。
先生がどんな声で、何を話すんだろうと思うと、怖くて仕方がなかった。
先生の全てを知ることはできない。
知ってはいけないんだ。
今は、先生の時間。
私が知っちゃったらだめなんだよね・・・・・・
「直、大丈夫だって~!」
「うん。わかってる・・・・・・」
ゆかりが私の肩を抱いてくれた。
『そろそろ俺、帰るぞ』
『せっかく久しぶりに集まったんだから、もっと付き合えよ』
そこまで聞いて、私は電話を切った。
先生は、“そろそろ帰る”と言ってくれた。
だから・・・・・・
大丈夫。
きっともうすぐ電話がかかってくる。