白いジャージ9 ~最終章~
「俺はお前になりたかった。みんな、お前の言うことはちゃんと聞いたし、お前の一言ってすげー重みがあった。俺は、頑張ってもそうはなれなかった」
健二は、天井を見上げて、フーっと大きく息を吐いた。
タバコの煙が薄暗い天井に向かって伸びていく。
「健二は健二、俺は俺だろ?お前は俺にないものをいっぱい持ってた。俺になろうなんて思わなくても・・・・・・」
「きっと、お前は俺にはなりたくなかっただろ?俺は、真っ直ぐな新垣和人に憧れていたし、尊敬していた。だからこそ、憎かったこともあるけど」
健二は、要領が良かった。
器用だった。
遊びも部活も勉強も、そつなくこなすことができた。
もちろん恋愛も。
俺は、それができなかった。
陸上に一生懸命過ぎて、彼女とうまく行かなくなることも多かった。
当時、直に出会っていたら、何かが違ったと思うけど。