Lonely Lonely Lonely
Bar 「tears」
「はぁ〜〜っ」
「ふぅぅ〜〜っ」
女が三人集まれば、姦しい、というものだけれど……。
私達の口から出てくるのは、酒臭いため息ばかりだ。
「マスター、ビールおかわりーっ」
私、中山美久がそう声をかけると、
カウンターの奥から
「ンンッ」
という、
不機嫌そうな男の咳ばらいが聞こえてきた。
そしてジョッキを手に私達のテーブルに現れたのは、スラリとした長身の美女……メイクを施した、ここのマスター、涼だった。
「あらーっ。今日はママだったんだ。ごめんごめん、気付かなくて。ここからだと、バーテンの様子が見えないから〜」
カウンターにズラリと並ぶ客の背中に埋もれて、今日の涼のスタイルが分からなかった。
彼、中山涼は私の、小学校・中学校時代の同級生。
そう、名字は偶然同じ。だから当時は、クラスメイトにからかわれたことも多々あった。正直、嫌な思い出だけれど、幼い頃の話だ。
年を経て、私達は、こうして仲良く、店員と客(常連)という関係になっている。
「あんた達……めちゃめちゃ辛気臭いオーラ漂ってるよ。そんなんじゃ男どころかコバエすら寄ってこないわ。お先真っ暗って感じ。う〜〜ヤダヤダ」
女装癖のある涼は、言葉遣いまでしっかり女になっている。
「涼ちゃんごめーん。私最近、男と別れてさ〜」
私の連れ・その1沢田瑠璃子がおかわりのビールを一気飲みしてから、気怠そうに言った。
「えっ。星野先」
私が、先生?と言い終えるのも待たずに、
「違う。美久の知らない男だよ」
またしても瑠璃子は気怠い様子で答えた。
「あんた今、何人男いるわけ?」
涼が聞いた。
「う〜〜ん。剛が抜けたから……三人、になった」
「それでも、男を切らさない瑠璃ちゃん、さすが」
ボソボソと囁くように
呟いたのは、連れ・その2
橋本めぐみ。通称グミ。
瑠璃子とグミは、私の高校時代の同級生。
つまり、ここにいる4人は同い年。
今年39歳になるが、皆独身だ。
「瑠璃ちゃん〜、ため息つくほど後悔してるなら、取り戻せばいいじゃん!
どーせ、あんたから振ったんでしょ?飽きたからもういい、とか言って。
ごめんなさい、やっぱり寂しいって一言で済むんじゃないの?」
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