Lonely Lonely Lonely
しばらく、その病院に見とれた。
大きくて、キレイ。そういえば、増改築してからまだ2年だと、ホームページに書かれていた。
このカフェのコーヒーも美味しいし……。
気に入った。
私は、自分が病気になったら、ここへ来よう。遠くても、手術とか、入院とかするなら、ここがいい。
誰になんと言われようと、ここがいい。
私は、カフェを出て、颯爽と歩き出した。
視線を感じるのが快感になったのは、いつからだろう。
たぶん、小学校の高学年ぐらいだったか。
ボディにフィットする、ドットのワンピに、ピンヒールの私は、およそ176センチほどになる。目立たないわけがない。
「どこの患者さんだろうね」
「お見舞いの人じゃない?」
そんな声が、聞こえて来るのも、楽しいものだ。
「モデルさんじゃない?」
「誰の奥様?」
「え?誰って?」
「きっと、ドクターの奥様でしょう?」
「ウソーそうなの~!」
面白い。
どうぞ、言ってくれ、言ってくれ、勝手に言ってくれ。私は、何も言ってない。ただ、歩いているだけだから。
受付を済ませ、神経内科へ案内されると、ほんのすこしだけ、ドキドキした。
ほんの少しだけだ。
私は、こういうことで緊張なんてしないから。
「沢田瑠璃子さんですね」
医師は、背を向けたまま、そう言った。
「はい……」
私は、緊張しているふりをして、そう答えた。
彼は振り返り、
「初めまして。藤川です。今日は、偏頭痛が酷いということで」
めっちゃ笑顔。
そしてやはり、愕然とするほどそっくりだった、
違うのは髪形と服装だけだ。
「はい、先生……。すみません、その前に、お聞きしたいんですが」
「はい、何でしょうか?」
うわ、めっちゃ爽やか!
やっぱり、この人がみるくの彼氏なのかしら……。だとしたら、ちょっと悔しいわ。
「先生は、この女性を、御存知ですか?」
みるくの写メを見せた。
「え?」
先生は、覗き込んでくれた。
「イヤ……、見覚えがないですね。あったとしても、患者のことは公言できません」
「いえ、患者さんではなくて……」
「プライベートですか?」
そういうことは、お話できませんのでお帰りくださいと、門前払いをくらいそうになってしまった。
「ちょっと、待って下さい。あなたのご家族にも関わることなんです!」
私は、粘った。ここで引き下がるわけにはいかない。