Lonely Lonely Lonely
「家族、ですか?」
「はい、藤川剛さんはあなたのご家族ですよね」
「……ええ。兄ですが、なにか?」
やっぱり!私は思わず握りこぶしに力が入った。
「双子、なんですね……」
「いいえ」
うそっ。確信したばかりだったのに!
違うのー?
「よく、そう言われるけど、一歳違いの兄弟ですよ。剛が、何か?」
「彼が、あなたを名乗って、先程の彼女と付き合っています」
「なんだって……?」
表情がみるみる変わって行った。
そう、彼はもう、ドクター藤川翔ではなく、
ただの藤川翔になっていたのだ。
「アイツ……」
チャンス!お願いするなら、今だ!
「それで、先生にお願いがあるんです」
「はい?」
いいね~、その、面倒臭そうな表情!
もはや剛への怒りと憎しみしかないって顔!
こういうの大好き~!
私は、いくらでも女優になってよ。
「近々、呼び出そうと思っています。その二人を。……よろしければ、同席して頂きたいんです。先生にも……」
「おもしろいですね。でも僕は、仕事で、なかなか……」
「お願いします!私の、友達に、目を覚まさせてあげたいんです。そのためには、どうしても、先生が必要なんです。彼女は、いくら言っても、納得してくれないから……」
「……そういえば、どうして、あなたは、剛の存在を御存知なんですか?」
「……実は、美容学校時代の同級生なんです。
今でも交流があります。彼女とのツーショットを見て、すぐに剛だとわかりました。彼が既婚であることも知ってます。
でも、でも美久は全然、信じてくれなくて……」
少し、涙ぐんでみた。
「そうでしたか。ということは、あなたも、美容師さん?」
「はい、最近開業しまして……」
いいタイミングで、涙がポロリと、零れ落ちてくれた。
「あっ、泣かないで下さい。今日、すぐには決められないけど……連絡を下さい。考えておきますので」
名刺をくれた。手書きで、ケータイの番号とメアドが記入されている。
「あ、ありがとう、ございます、、、」