Lonely Lonely Lonely
名刺をゲットしたことで、本日の任務遂行、大満足だ。
「沢田さん、ところで、偏頭痛のほうは?」
「先生とお話したら、治っちゃいました」
「そうですか。それは良かった。では、薬は、出さなくても?」
「はい、大丈夫です」
もう、仮病であることは、とっくにばれてる。
二人で急に話を合わせ始めたのは、退席していた看護師が戻って来たからだ。
「では、失礼します。ありがとうございました」
そう言って診察室を後にしようとした時、
「あっ、沢田さん。ちょっと待って下さい」
呼び止められて、手渡されたのは、彼の私物か?
シンプルな手鏡。
「どうぞ、次の方までまだ少し時間が
ありますから、メイクを直して、行ってください」
「え……?」
その手鏡を覗いて見ると、
マスカラやアイラインが落ちて、パンダのようになっている私の顔!
ヒエ~!
危ない、危ない。
こんな顔で出て行ったら、違う意味で視線を集めてしまうとこだった~。
慌てて、私はアイメイクを直した。
よし、ばっちり!になったところで、
「先生、ありがとうございました!」
気を使って、背中を向けてくれていた藤川翔に、明るく声をかけた。
「はい、では、お気をつけてお帰り下さい」
「はい、失礼します」
さーて、あとは御礼と、予定伺いのメールを送るだけだ。
診察終わってすぐ送るのは、なんだかイヤらしいので、帰宅してから、ぐらいがちょうどいいだろう。
まだまだ、時間は、たっぷりある。
美味しいものでも、食べて帰ろう~!