Lonely Lonely Lonely


名刺をゲットしたことで、本日の任務遂行、大満足だ。



「沢田さん、ところで、偏頭痛のほうは?」



「先生とお話したら、治っちゃいました」


「そうですか。それは良かった。では、薬は、出さなくても?」



「はい、大丈夫です」



もう、仮病であることは、とっくにばれてる。
二人で急に話を合わせ始めたのは、退席していた看護師が戻って来たからだ。



「では、失礼します。ありがとうございました」



そう言って診察室を後にしようとした時、




「あっ、沢田さん。ちょっと待って下さい」



呼び止められて、手渡されたのは、彼の私物か?
シンプルな手鏡。



「どうぞ、次の方までまだ少し時間が
ありますから、メイクを直して、行ってください」



「え……?」



その手鏡を覗いて見ると、



マスカラやアイラインが落ちて、パンダのようになっている私の顔!



ヒエ~!



危ない、危ない。



こんな顔で出て行ったら、違う意味で視線を集めてしまうとこだった~。



慌てて、私はアイメイクを直した。



よし、ばっちり!になったところで、




「先生、ありがとうございました!」



気を使って、背中を向けてくれていた藤川翔に、明るく声をかけた。




「はい、では、お気をつけてお帰り下さい」




「はい、失礼します」




さーて、あとは御礼と、予定伺いのメールを送るだけだ。



診察終わってすぐ送るのは、なんだかイヤらしいので、帰宅してから、ぐらいがちょうどいいだろう。



まだまだ、時間は、たっぷりある。



美味しいものでも、食べて帰ろう~!


< 105 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop