Lonely Lonely Lonely
8・作戦決行
その日は、朝から優しい雨が降っていた。
私は時折、その美しい雨を眺めつつ、仕事を順調にこなした。
そしてその雨は、夕方には、止んだ。
「今日の私の最終受付は、5時!」
と、スタッフ達に伝えておいた。
幸い、6時からを希望されたお客様は、明日の午後でも良いということで、予約変更。
その一件のみだった。
「珍しいですね。仕事の鬼の瑠璃子さんが、6時上がりだなんて」
「そりゃもちろん、男ですよね。そうでしょ?瑠璃子さん」
「もちろん、超いいい男。しかもドクター」
「えーっ。どうやって知り合うんですか?瑠璃子さんて、ほんと、すごい」
美容学校を卒業してまだ2年目の、前田京子が、すごいすごいを連発している。
私に憧れ、尊敬してやまないと、口では言っているが、本心はどうだか。
男を紹介してくれオーラがたっぷりなので、逆に気が失せる。
「出会いは、巡ってくるものだからね。私にも、わからないわ。ごめんね」
曖昧に、そして絶妙に、その子を避ける。
「それじゃ、私、あがるから。あと、よろしくね~」
遅番のスタッフに声をかけながら、私は考えていた。
前田は、ウチではない、どこか大きい店で修行したほうがいいんじゃないだろうか、と。
それこそ、剛の店で手厳しく育ててもらったほうが良いのでは?とか……。
あいつは、女にだらしないが、仕事の腕はピカ一〈イチ)だ。人材育成に関しても、申し分ない。
だからこそ、グミを任せることが出来たし……。
一旦帰宅して、シャワーを浴びた。
仕事モードから夜遊びモードに切り替える。
しっかりメイクを施して、また出かける。
時間は、まだある。
私はお気に入りのカフェでコーヒーとベーグルを頼んだ。
雨上がりの道路や、草花は
しっとりと潤い、夕明かりに
キラキラと輝いている。
まったり
とした時間を過ごして、いざ出陣。
彼からは
「ごめん、新幹線の都合で、10分程遅れます。申し訳ないです」
とのメール。
全然、大丈夫ですよ!と返信した。