Lonely Lonely Lonely
なぜって?
それでも、彼はその奥さんを愛しているから。子供たちを愛しているから。
私は、それを知っているから。
言っちゃいけない。
それを言ったら、私達の関係は、一瞬にして、消えてしまいそうで、私は怖い。
いっそのこと、言ってしまえば楽になれるのに、と思った事も、もちろんあるけど。
言えないまま、ズルズルと……。
ああ!!もうやめやめ。
今日は、みるくのために、来てるんだから。
私は、姿勢を正して、みるくのもとへ。
「あれ?ひとりなの?」
と、声をかけると、
「あっ、瑠璃子だ~。るりこ来た来た~来た~」
まったく、呂律がまわってるんだか、まわってないんだか。
なんだか眠そうな目をして。
「ひとり……。そう、私は、ひとり……。翔くん、仕事で来れないって。だから、私も行かないって言ったんだけど、コイツが来い来いってシツコイから~」
と、指を差されたバーテン野崎くんは、
違う、違うとばかりに首を振っていた。
わかってるよ、と、私は、静かに頷いた。
ちょうどその時、奥の厨房から、涼ちゃんが出てきた。
「るりちゃん、いらっしゃい。あれ?ひとりなの?」
「少し遅れるっていうから、先に来てみた」
「ああ、そうなんだ。あれっ。コイツもう、こんなことになってんの?」
オーナーに睨まれた野崎くんは、恐る恐る、
「どんどん出して!って。美久さんが……」
「どんだけ出したわけ?コイツ、来てまだ10分位だよな。おかしいだろ」
みるくは、カウンターに突っ伏して、動かない。
「いったい何を飲んだんだ?え~と、ビールにハイボールに赤ワイン2杯?バカかお前、少しは加減しろ!」
「え、で、でも、いつも美久さんて、よ、よく飲まれ、てますよね?」
奮えてる、奮えてる。
「だからって、ペース早すぎんだろ!」
涼ちゃんの厳しい目は続く。
私はなんだか野崎くんが気の毒になってきた。
幸い、店内には、まだ私達しかいない。
「野崎くん、大丈夫よ。とりあえず、お水をもらえる?」