Lonely Lonely Lonely
その後ろに、グミがいることに気付いた美久は、
「あっ、ありがとう、グミ。案内して来てくれたのね!」
幸せな勘違いだ。可哀想だけど、その幸せも、そこまでよ、美久。
剛は、グミをとったんだ。
ふーん。
「良かった~。ホントに、あたし、寂しかったのようーっ!」
なお絡みつく美久に、戸惑う剛。
「ちょっと、美久ちゃん、この人は、違うよ」
グミの言葉に、美久は、
「へっ?」
と間抜けな声をあげた。
仕方ない、そろそろ出番かなと思い
私は立ち上がった。
「あら!剛じゃない。おひさしぶり!!」
「おう、瑠璃子。お前も、いたのか?」
そう言いながら、確認するようにグミを見つめていた。
グミには、私が来ることを口止めしておいたから。
グミがごめんね、ごめんねと謝っていた、
それを、ただ眺めているだけの剛。
私がいるのは、まだわかる、
しかし、美久がいることに、理解が出来ず混乱しているはずだ。
そして美久は、目に涙を浮かべ、ズルズルと後ずさりし、
席に戻って来た。
「ねえ、楽しい?こんなことして、楽しいの?」
うん、楽しいよ。
とは、言えなかった。
その、失意に満ちた表情を見たら。
でも私は、まだまだ、彼女を傷つけようとしている。
「言ったでしょう、彼は剛だって。美久に、いい加減、わかってほしかったから」
その時、♪♪♪と、私の携帯が鳴った。
!あっゲストが来たわ。私、迎えに行って来るから。ん~と、あっ、青木くん!
美久のこと、よろしく!」
涼ちゃんは、厨房に戻ってしまっていた。
私は逃げるように、店を出た。
あれ?やんだはずの雨が、また降り出している。
ええい、いいや。駅は、すぐそば。
私は走って、駅へ向かった。
ただただ、ヒールが折れないことを祈りつつ……。
改札前の椅子の下。約束の場所に、彼は、いた。
「ああ、沢田さん。お待たせ。あれ、傘は持っていなかったの?」