Lonely Lonely Lonely
美久の声が荒くなってきたが、ここで尻込みするわけには行かなかった。
「やっと目が覚めたみたいねえ。こうでもしないと、現実を認めてくれないでしょ、美久は」
剛が、下を向いている。
「……おせっ……」
「えっ?何?美久。聞こえない」
「余計なお世話だよって言ったの!それに、なんでそう、いつも上から目線なのかな。ムカつくんだけど」
いや~。この声!小さかったり、でかすぎたり、賑やかな女だ。
「ちょっと、そのキンキン声、勘弁して。うるさいわ」
カウンターに、ひとりで来店していた女性客が、美久にそう言った。
気が付けば、店内には着々と、お客さまが、入っていたのだ。
「スミマセン」
美久は素直に、頭を下げた。
そして、
「私、帰る」
財布の中から五千円札を出して、乱暴に置き、
「さよなら。瑠璃子、グミ」
最後にそう言うと、走って店を出て行ってしまった。
「待てよ、おい!」
すぐに涼ちゃんが、追いかけて行った。
それから、グミが。
「みくちゃん、……、みくちゃん!」
バッグを持って席を立ったので、
「もう遅いでしょう。きっと今頃タクシーに乗ってるか、涼ちゃんとどこかに行ってる」
「みくちゃんは、タクシーに乗ってない。涼さんとも一緒じゃない。きっと、コーヒーを飲んでると思う」
コーヒー?
あ、駅裏のコーヒーショップ。高校時代に3人で、よく行ったあの店?
あそこへ行くならら、
駅前のタクシー乗り場とは真逆だ。
迷いなく、グミは
走って行った。
まったく、あの子の一挙一動には、ことごとく驚かされるものだ、
静まり返った私達のテーブルで、
「すみませ~ん。ビール下さい」
と、呑気にドリンクを頼む剛。
「ちょっと、あんた。追いかけないの?」
「えっ。だって。マスターが追ったから、俺はいいんじゃないか?」
もう、
アキレテモノモイエナイワ。