Lonely Lonely Lonely
「あんたさあ、謝ってないよね。美久に」
「ああ」
そう言って、サラダやパスタを食べまくっている、下品な剛。
ちゃんと味わっているのか?と思っていた矢先、
「うまいな、ここのメシ。なんも食って来なかったから、超うめえよ」
いつ離婚したのかわからないが、美味しい料理に飢えていたのか。
「今日は、出さないぞ」
と言ったのは、翔さん。
「えっ、なんで?」
「俺がいるからって、そんなドカ食いしても、今日は、出さないぞって言ってるんだよ!」
「なんで?いつもなら、黙って出してくれんじゃねーか。困るよ、おい」
どうやら、今日の会計の件らしい。
「いつまでも、俺をあてにするなよ。
もっとも、今日は、約束していたわけじゃないから、それなりに、持って来てるんだろ。自分で出せよ。俺はお前の財布じゃない」
「そんなこと言うなよ~。たったひとりの兄弟じゃないか~」
ダンッ、っとテーブルを強く叩く音が響いた。
とうとう、怒りの絶頂に達したか。
翔さん!
私ですら、今の発言にはイラッとしたからね。
「お前、よくも、そんなことが………」
怒りに震えた声で、そう言い始めた時に、
「失礼します。ジェラートは、いかがですか?」
美味しそうな、ジェラートを持って来てくれたのは、青木くんだった。
「あらあ、美味しそう!クールダウンにちょうどいいわね」
私は、喜んで彼とジェラートを招き入れた。そして尋ねた。
「翔さん、甘いもの、大丈夫?」
「ええ。大好きです」
良かった。もう落ち着いた声だ。
食べる前にクールダウンしてくれてる。
剛はというと、既に食べてるし。
「うんめ~!これ、超うめえよ」
はええよ!
「ありがとうございます。くれぐれも、兄弟ゲンカはご自宅のほうで、お願い致します」
素敵。ちゃんと、こっちの様子を見ててくれたんだ。
「そうよね。他のお客さまに、ご迷惑だわ」
「それもあるけど、マスターが……」