Lonely Lonely Lonely
「んっ?なに?」
口ごもる青木くんを捕まえて、その先を問い詰めた。
「なんていうか、妬いてしまうんですよ」
「妬く?」
「はい。マスターは、一人っ子だから、兄弟ゲンカとかうらやましいって」
「…………」
なにも言えなかった。
「殴りあいのケンカとか、してみたかったって言うんですよ。
ちなみに、うちは男三兄弟だから、取っ組み合いなんかしょっちゅうで、マスターとは全然違う環境で育ってるんですけどね」
さりげなく話を反らして、彼はカウンターへ戻っていった。
なんか、ちょっと、ジーンとしてしまったな。
藤川兄弟が一気におとなしくなったのも、ジェラートのせいだけじゃないだろう。
その時。
「いや~、参った。逃げられちったよ。アイツ昔っから逃げ足は、速かったからな~」
噂の〈?)涼ちゃんが帰ってきた。
「どう?こちらは。仲直りできた?あれ、グミちゃんが、いないね。御手洗い?」
「いいえ。グミは、美久を追いかけてから戻ってこないよ。たぶん今頃一緒じゃないかな」
「そうかー。それなら安心だな。連絡きたんだね」
「連絡は、来てないけど、私のカン。きっと、大丈夫。心配ないよ」
「うん。るりちゃんが、そう言うなら、ね」
「そして、仲直りは、できてないわ」
「あれ、そうなんだ。ずいぶんおとなしくなってるから、てっきり……」
翔さんは首をブンブン横に振り、
剛は再び飲み食いをし始めていた。
「おとなしくなってるのは、青木くんの気遣いでね。仲直りにはほど遠いけど、小休止って感じかな」
と、説明してみた。
「そうなんだ。青木が?何を?」
「いいタイミングで、これを」
と、ジェラートの器を見せた。
「なるほど。頭冷やせってか?アイツらしいな」
「感心してる場合じゃねえぞ~。
俺は今、心から、ムカついてるぞ~」
そう言う剛の視線は、……え。
そうか、私か。
〈まあ、納得)
「はじめっからこの為だったんだな。俺にめぐみを当て込んできたのは。
すっかり騙されたよ。
友達が来るからぜひ来てほしいって言われて、来てみたら、美久がいて、お前がいて、挙げ句に翔まで来るなんてな」