Lonely Lonely Lonely
「そうですね。なかなかの、迫力でした」
そんなつもりは、なかったのに。
「でもねえ、一つだけ言っておくよ。剛さん。今回の首謀者は、るりちゃんじゃなくて俺だから。
全部、俺が計画したこと。だから、彼女を責めるのはお門違いですよ。
それから、グミちゃんに、口止めはしていません。るりちゃんのことを話さなかったのは、彼女の意志です。
みんな、美久を想ってのことです。
藤川翔さん、今回あなたまで巻き込んだことは、本当に申し訳なく思っています」
そう言って涼ちゃんは、彼に頭を下げた。
「そんな、僕は今日、ここに来ることができて、良かったと思っています。感謝していますよ。マスター、お客さまが、入って来ています。どうぞ、頭をあげて、仕事にお戻り下さい」
涼ちゃんは、ありがとうございます、と小さく言って、カウンターへ戻った。
再び、空気が悪くなるこのテーブルに……。
「ああ、良かった、みんなまだいた~」
と、グミが戻ってきた。
「るりちゃん、ただいま!」
と、グミは私と翔さんの間に座った。
「グミ、どこに行ってたの?美久は?」
「帰ったよ。るりちゃんと、本物の翔さんに、よろしくって」
チェッ、と、剛が舌打ちした。
「なんだあの女、いい夢見させてやったのによ!」
だいぶ落ち着いてきた私だったが、
この発言は許しがたかった。握り拳を胸に立ち上がろうとしたら、
既に、翔さんの右ストレートが入っていた。
あきらかに、私のビンタより破壊力があったようだ。
剛は、ゲホゲホと咳き込み、しばらく声も出せずにいた。
「今日は、実家に泊まろうかと思ったんですが、さっき母に電話したら、雪乃さんは芽衣を連れて出て行ったというので……。こいつのマンションに泊まります。
あ、芽衣というのはこいつの娘で……家の親父たちも可愛がってたのに……。
いろいろ、ゆっくり話をしたいので。今日は、失礼します。
ご迷惑をおかけしました」
広いマンションに一人暮らしか……、お気の毒。
引きずられるように、店を出ていく剛の姿は、情けないの一言に尽きる。
そんな二人を、グミは見送りに行った。
私は、カウンターへ戻り、水野くんにカクテルを作ってもらっていた。