Lonely Lonely Lonely
「そういえば、俺、みかけたぞ、アイツ」
「アイツって?」
「美久」
えっ、ピロートークでまさかの、美久話?
「どこで?」
「ファーストフード店。ハンバーガー食べまくってた。回りが引いてたぞ」
「ええっ」
みるくが、そんなことをするなんて。
信じられないなあ。
「テーブルにいろんな種類のハンバーガー並べて、1個ずつ片付けていったんだ。大人はドン引きだよ。でも、学生達は違った。
スゲースゲーって羨望の眼差しだ。
ガキが夢見ることだろう?あんな、ハンバーガーの大人食い。食べ盛りだからな。
でも、奴らは、金がなくて、出来ない。
しかし今、目の前でやりとげている、ヤバイねーちゃんがいる。アイツがコーラおかわり!と言えば、群がった学生のひとりがパシってた。
まあ、そのパシリには、多少チップをやっていたようだけどな」
「え、でもそれ、本当に?みるくなの?」
「ああ、間違いないよ。お前、会ってないのか?」
「うん、電話もメールも、シカト状態で、何度か職場に行ってみたけど、出張中だったり、外出中だったりで、全然会えてないの」
「居留守だろうな、きっと」
「居留守って、なぜ?」
「合わせる顔がないんだよ。かなり太ったから」
ええっ。
今度は声も出なかった!
「想像つかないんだけど……」
「おそらく、10キロオーバーは固いな。あのまま太り続けたら、仕事クビになるんじゃないか。デブがアパレルは、ちと厳しいだろう」
女性を見る目に関しては、シビアである剛が言うことだ、説得力がある。
みるく、なぜ?なぜそんなことに……?
泣きそうになるのを、ぐっとこらえた。
そして、
「さっきさあ、オバチャンじゃなくて、
ねーちゃんって言ったね」
「ああ、まあギリギリセーフなんじゃねえの?」
それを聞いて、クスクス笑っていると、
「なんかお前、変わったな」
「え、そう?」
「ああ、前は、あんまりそんな風に笑わなかったよな」
そんなことを言われて、なんだか照れてしまって、思わず……。
手が出ちゃった。
剛の胸を叩くと、バチン!と大きな音が響いた。