Lonely Lonely Lonely
11-さまよう


それから、私は仕事仕事の日々を送った。

相変わらず、みるく達とは音信不通。貴志さんは最近、転勤でまた近くへ来たけれど、全然会ってくれない。


いよいよ潮時か、と長い関係をふりかえる。


仕事を終えて、美しい月を眺めると、ポロポロと涙を溢すようになってしまった。


おかしい。以前はこんなことなかったのに。
歳のせいかしらね。


さて今日はどこで飲もうかな?


駅前をさまよっていると、


「瑠璃子さんっ!」


聞き覚えのあるような、ないような声だった。


「あ、やっぱり、瑠璃子さんだ」


そう言って私の前で息を切らしていたのは……。


「ああ~、あなた、たしか涼ちゃんの店の」


「水野です。水野誠といいます」


「そうだそうだ、水野くん。おひさしぶりね。大丈夫?すごい息切れね」



「だって、あっ、瑠璃子さんだと思って、めっちゃ走ってきましたから……」


普段着、なのかな?あの店の制服ではない、ジーンズにザックリしたセーターの、カジュアルなスタイルだ。私の前で、膝を少し落として、息切れしている姿は、なかなかセクシーだ。


うつむいたその顔の、鼻の高さに見とれていると、


「瑠璃子さん、これから時間、ありますか?」


「うん。あるけど……。ご飯、食べたくて」


「あーっ、俺もなんですよ。一緒にどうですか?」


「そうね。美味しいところに、連れて行ってくれる?」


「もちろんです。じゃあ、ご案内しますので、どうぞ」


差しのべられた手に、そっと自分の手を載せると、彼はそのまま手をつないで、歩き始めた。


なんだか、照れくさいなあ。
年下なんて、興味なかったけど、この子は、何か揺さぶられるものがある。


あれ、でも私、この子の年令知らないわ。見た目判断だった。


「水野くん、て、私より歳、下だよね、きっと」


疑問はすぐに確認するもの。


「はい。そうですよ」


笑顔で彼は言った。この会話は、それで終わった。
私の歳を知ってるみたい?


ああ、涼ちゃんから聞いたのかな。


はい、そうですよ。言い切りだもんね……。いくつなんだろ。まあいっか。
お店、着いてからで。




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